毒 性 |
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毒性の強さとしては、人の健康に与える悪影響の強さと水中の生物(水生生物)に悪影響を与える強さとを考えました。また、人の健康に与える悪影響の強さの情報は、人が化学物質を取り込む経路が、主に大気(吸入)と飲料水や食物(経口)ですので、経口毒性と吸入毒性について考えました。なお、これらの毒性には低濃度で長期間取り込んだ場合に問題となる長期毒性(発がん性や慢性毒性等)と事故等で短時間に取り込んだ場合に問題となる短期(急性)毒性とがありますが、PRTRでは日常的な環境のリスクを考えるので、長期毒性のみを利用し、短期毒性については毒物・劇物の指定がされているか否かの情報だけを提供することにしました。 一方、水生生物に対する毒性の強さは、OECDやEUと同様の考え方で、データ数の多い指定生物種についての魚類の半数致死濃度(LC50)、ミジンコ類の半数遊泳障害濃度(EC50)、藻類の半数増殖阻害濃度(EC50またはIC50と表記)などの短期毒性値を利用し、生物濃縮性などを考慮した安全係数を用いて、長期毒性を推計して情報提供することにしました。 まず、毒性の強さを考慮した「人に対する大気管理参考濃度」、「人に対する水域管理参考濃度」、「水生生物に対する水域管理参考濃度」、それらの逆数の「人に対する大気経由毒性重み付け係数」、「人に対する水経由毒性重み付け係数」、「水生生物に対する毒性重み付け係数」とその情報源、およびそれらの総括表を示しました。これによって、それぞれの化学物質について、環境汚染の測定結果を評価したり、環境管理の目標を設定したり、リスクコミュニケーションを行うことが容易になり、また、排出量や使用量の削減等に優先的に取り組むべき化学物質が判断しやすくなると考えています。 また、これらの毒性の強さに関する情報(毒性重み付け係数)とともに、人に対して発がん性、生殖毒性、変異原性、感作性(アレルギー誘発性)などの毒性があることは分かっていても、これらの毒性の強さが求められていない物質については、人に対して毒性を与えるという情報の確からしさをランク分け(毒性確度ランク)して、各化学物質ごとに棒グラフで示しました。これによって、それぞれの化学物質が、人に対して大気経由や水経由で毒性がどの程度強いのか、水生生物に対して毒性がどの程度強いのか、人に対して発がん性、生殖毒性、変異原性、または感作性(アレルギー誘発性)を示す確からしさがどの程度なのかが一目で分かります。 さらに、「発がん性、生殖毒性、変異原性、感作性(アレルギー誘発性)の確度ランク別物質名リスト」を示しました。これによって、どのような化学物質が、人に対してどの程度確かに、発がん性、生殖毒性、変異原性、または感作性(アレルギー誘発性)を示すのかが容易に分かります。 ここで、この毒性確度ランクは、影響の深刻さなどを考慮して、発がん性はA〜Eランクの5段階(ただし、Eランクの物質はない)、生殖毒性はA〜Cランクの3段階、変異原性はCランクのみ、感作性はB、Cランクの2段階に分けました。これらの詳細は、それぞれの毒性のところで説明します。ただし、毒性確度ランクと毒性の強さとは直接関係はないことに注意が必要です。 なお、内分泌攪乱(環境ホルモン)性については、現時点では信頼できる情報がないので、今回はランク分けしませんでしたが、内分泌攪乱性が強い物質は、発がん性、生殖毒性、あるいは水生生物毒性を示す可能性が高いと考えられ、これらの毒性である程度はカバーされていると考えています。 ただし、信頼性の高い国際機関や日米の政府機関または信頼できる専門家機関等による情報がない毒性については、環境管理参考濃度や毒性重み付け係数、および毒性確度ランクの表示をしていません。表示がないことは、その毒性についての情報が不足していることを意味し、必ずしも安全であることを意味していませんので注意して下さい。 |
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大気管理参考濃度 水域管理参考濃度 水生生物保護参考濃度 毒性重み付け係数 参照 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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現在、毒性に関する情報は、各種の国際機関、国、地方公共団体、学会、その他の公共機関、およびデータベース業者などの様々な情報源から発信されています。しかし、情報源によって毒性データやデータの評価結果が大きく異なることがあり、信頼性の不明確な情報を利用すると、誤った判断をしてしまう恐れがあります。このため、信頼性の不明確な情報源は使用せず、信頼性の高い情報源のみから情報を収集すること、および信頼性のより高い情報から優先的に利用することが極めて重要であると考えました。 そこで、エコケミストリー研究会と(有)環境資源システム総合研究所および横浜国立大学大学院 環境安全管理学研究室では、専門家の議論を経た信頼性が高い情報源として、(a)日本の政府機関、(b)国際機関、(c)米国の政府機関、(d)上記以外の信頼できる学会等の専門家機関からの情報を用いることとしました。すなわち、全体の信頼性を失わないために、これら以外の都道府県や米国の州などの情報や商業データベース等の情報利用しないことにしました。ここで、日本以外に米国の政府機関のみを選定した理由は、米国が世界的に最も毒性情報が充実している国であり、他の国については公表情報が少なく、採用、不採用の判断や情報の更新が難しいためです。 ただし、水生生物に対する毒性情報は、(a)、(b)、(c)からの情報にも信頼性が低い情報が混在していますので、(有)環境資源システム総合研究所および横浜国立大学大学院 環境安全管理学研究室が、信頼性の低いデータを除いて整理、解析した値を採用しました。 なお、日本の基準値や指針値等は最新の値、それら以外は2012年2月の値を使用しました。 |
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環境管理参考濃度 参照 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
人に対する吸入(大気経由)毒性と経口(水経由)毒性の強さ、および水生生物に対する毒性の強さについては、それぞれ、
大気管理参考濃度
水域管理参考濃度
水生生物保護参考濃度および毒性重み付け係数のところに説明してありますのでご覧下さい。 人に対して毒性を示す確からしさ、すなわち、毒性確度情報を提供した発がん性、生殖毒性、変異原性、感作性(アレルギー誘発性)について以下に簡単に説明します。 なお、毒性確度ランクと毒性の強さとは直接関係はないことに注意が必要です。 |
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発がん性とは、人に悪性腫瘍(がん)を誘発させる性質のことです。 |
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人に対する発がんの証拠の確からしさは、表8に示すような情報源の2012年2月現在の情報をもとにランク分けしました。 表8
発がん性ランクに用いた情報源とその入手先
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表8に示した機関では、人に対する証拠の程度から発がん性物質を表9に示すように分類しています。
表9 7つの機関の発がん性分類の比較
各機関の分類は、微妙に違いますが、基本的には、「I.人に対して発がん性がある物質」、「U.人に対して発がん性があるとみなすべき物質」、「V.発がん性の可能性がある物質」、「W.発がん性が分類できない物質」、「X.発がん性がない物質」に分けられています。 |
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表10 発がん性確度ランクの決め方
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人に対する生殖毒性の確からしさの評価を行っている信頼できる機関は、表11に示した欧州共同体(EU)だけです。 EUでは、人に対して生殖毒性があると推定される証拠の程度や影響の種類に応じて、R60 Cat.1、R61 Cat.1、R60 Cat.2、R61 Cat.2、R62 Cat.3、またはR63 Cat.3に分類表示するように指定しています。ここでは、これを国際的な機関で評価された生殖毒性の情報として利用することとしました。 なお、今後、内分泌撹乱物質の研究が進めば、それらの情報から生殖毒性物質に追加される物質が増えてくるものと考えられます。 表11 生殖毒性ランクに用いた情報とその入手先
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表12 生殖毒性ランクの決め方
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表13 変異原性ランクに用いた情報源とその入手先
人に対する変異原性の確からしさの評価を行っている国際的な機関は欧州共同体(EU)だけです。EUでは、人に対して影響があると推定される証拠の程度に応じてR46のCat.1、R46のCat.2またはR40のCat.3に分類表示するよう指示しています。 日本では、厚生労働省が労働安全衛生法に基づいて、微生物に対する強い変異原性と染色体異常が確認された物質を指定しています。これらの日本の情報については、人に対する変異原性の確からしさの程度の分類は行われていませんが、政府機関が評価した信頼できる情報として採用することとしました。 |
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表14 感作性ランクに用いた情報とその入手先
欧州共同体(EU)では、気道感作性と皮膚感作性の可能性のある物質をR42とR43に分類表示するよう指示しています。R42は人に対して明らかに気道感作性がある物質、R43は動物実験で皮膚感作性があることが認められた物質とされています。 この他に、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)では、気道感作性物質を人に対する影響の証拠によってSENやsensitizationと分類表示しています。また、日本産業衛生学会では、気道感作性と皮膚感作性について、それぞれ疫学的な証拠の程度によって第1群と第2群に分類しています。ここでは、これらを専門家機関によって十分に評価された情報として、順位をつけずに採用することとしました。 |
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感作性は、発症した際の被害の深刻度が発がん性や生殖毒性よりはやや小さいと考えられることから、これらの毒性より1ランク下げてランク分けすることとしました。 また、ACGIHのSENと産業衛生学会の第1群、および欧州共同体(EU)のR42の物質は、人について十分な証拠があるとされていますので、表15に示すように、気道感作性物質も皮膚感作性物もBランクとしました。また、ACGIHのsensitizationと産業衛生学会の第2群の物質、および欧州共同体(EU)のR43の物質は、人については十分には証拠はないとされていますので、気道感作性物質も皮膚感作性物質もCランクに分類することとしました。 なお、環境省のPRTR・MSDS対象物質の選定では、皮膚感作性物質は考慮していません。皮膚感作性物質は、環境への排出では問題は少なくても、廃棄物としての移動や商品の利用などでは、取扱に注意する必要がありますので、本情報では、皮膚感作性物質も気道感作性と区別せずに、人に対する感作性の証拠の確からしさによってランク分けをしました。 表15 感作性ランクの決め方
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物 性 |
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化学物質の基本的な性状を示す値を物性値といいます。 この物性値は、その化学物質を特定するために用いたり、化学物質の取扱方法、環境汚染の防止方法などを検討するために役立ちます。 そこで、本情報では、信頼できる情報源を選んで、組成式、分子量、金属含有率、密度、融点、沸点、蒸気圧、水溶解度、オクタノール−水分配係数(Pow)の対数(LogPow)、およびオゾン層破壊係数(Ozone Depletion Potential:ODP)を示しました。 なお、無機化合物には結晶水が付いた水和物がいくつかありますが、水和物があることだけを表記し、水和していない無水物のみの物性値を記載しました。 各化合物の組成等に関する情報と物性値の意味を以下に簡単に説明します。 |
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各化学物質(化合物)を構成する元素の数を示した式を組成式といいます。 C(炭素)を含む化合物はC、H(水素)の次にアルファベット順、その他の化合物はアルファベット順に並べることになっています。 たとえば、エチルアルコールの組成式はC2H6O、硫酸第2銅の組成式はCuO4S、1、2-ジクロロ-3-ニトロベンゼンと1、4-ジクロロ-2-ニトロベンゼンの組成式は 、どちらもC6H3Cl2NO2です。 なお、炭素を含まない化合物やCO、CO2、CSe2などの炭素と酸素、イオウ、金属などだけとの化合物を無機化合物といい、その他の炭素を含む物質を有機化合物といいます。 PRTR・MSDS対象物質は、いくつかの金属及びその化合物、石綿、無機シアン化合物、ふっ化水素及びその水溶性塩、ほう素化合物だけが無機化合物で、残りはすべて有機化合物です。 |
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化合物の1モル(化合物の基本単位)の重さ(質量)をグラム数で表した値で、組成式で示される構成元素の原子量の和を分子量といいます。 たとえば、トルエンとトリクロロエチレンの分子量は、それぞれ92.1と131.1で、1モルが92.1gと131.1gになります。 有機化合物では、分子量が分子の大きさの目安になります。また、分子量が小さいと気化しやすく、大きいと気化しにくくなる傾向がありますので、分子量から気化のしやすさがおよそ分かります。 また、ある気体化合物の20℃でのmg/m3単位の空気中濃度Caから、ppm単位の空気中濃度が[24.04Ca÷分子量]によって求められます。たとえば、空気中に分子量が92.1のトルエン5.0mg/m3あると、24.04×5.0÷92.1=1.3ppmとなります。 なお、ppmとは100万分の1のことで、1ppmは、空気中の濃度では1立方メートル(m3)の空気中にある気体が1ミリリットル(mL)入っていることに相当します。また、水中の濃度では、1キログラム(kg=1L)の水の中に1ミリグラム(mg)入っていることに相当します。 |
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金属化合物については、金属元素濃度で分析が行われることが多く、PRTR報告も金属換算で報告することになっていますので、これらに便利なように、金属含有率も示しました。 この金属含有率とは、分子量のうちで、金属元素の重さ(質量)が占める割合で、実際に測定される1キログラム(kg)の化合物のうちに金属が何キログラム含まれるかを示しています。 たとえば、組成式CuO4S、分子量159.6の硫酸第2銅の銅含有率は0.40で、硫酸第2銅の1kgは銅として0.40kgになります。 なお、無機化合物には、水和物がありますが、すべて水和していない無水物のみについて示しました。たとえば、硫酸第2銅には5水和物(5水塩ともいいます)がありますが、無水物のCuO4Sのみについて示しました。 |
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ある温度(通常は20℃付近)での体積あたりの重さ(質量)のことで、本情報では、1ミリリットルあたりの固体または液体のグラム数(g/cm3=g/mL)で表します。 この値は、1リットルあたりのキログラム数(kg/L)に相当します。この値が大きいと同じ体積でも重いことになります。 たとえば、水の密度は20℃で0.9982g/mL、20℃のトルエン、トリクロロエチレン、水銀の密度は、それぞれ0.87g/mL、1.50g/mL、13.5g/mLですから、トルエンは水より少し軽いのですが、トリクロロエチレンは、同じ体積で水より1.5倍重く、水銀は水より13.5倍も重いことになります。 なお、4℃の水の密度(0.99997でほぼ1.00)との比のことを比重といいます。比重は、密度とほぼ等しい値になりますが、単位はありません。 また、密度分の1(密度の逆数)は、1グラムの物質の体積が何ミリリットルになるか、1キログラムの物質が何リットルになるかを示します。 たとえば、水1kgは約1.0Lですが、水銀1kgは約0.074L (74mL)にしかなりません。 なお、粉や粒を詰めた場合には、粉や粒の間に空間がありますので、詰めた体積あたりの重さは、多くの場合、およそ密度の2分の1から3分の1程度になります。これを充填密度といいます。物性情報で示した物質の真の密度と間違えないようにしてください。 たとえば、硫酸第2銅(無水物)の密度は3.6g/mLですが、硫酸第2銅の粉を1Lのビンに詰めても1.5kg程度しか入りませんので、この場合の充填密度は1.5kg/L(1.5g/mL)です。 また、充填密度分の1(充填密度の逆数)は、1グラムの物質を詰めたときに体積が何ミリリットルになるか、1キログラムの物質を詰めたら何リットルになるか、あるいは1トンの物質を詰めたら何立方メートルになるかを示します。 |
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固体が溶けて液体に変わる温度(液体が固まって固体になる温度と同じ)を融点といいます。 この値が室内温度(室温)以上であれば室内で固体、室温以下であれば室内で液体です。 たとえば、パラジクロロベンゼンの融点は53℃で、室内で固体ですが、トルエンの融点は−95℃で、室内で液体です。 融点が室温付近の物質は、室温が低いと固体、高いと液体になるので注意が必要です。 たとえば、メタアクリル酸の融点は16℃ですので、室温によって液体になったり固体になったりします。また、3種類(異性体)あるキシレン類のo-キシレン、m-キシレン、p-キシレンの融点は、それぞれ−25℃、−48℃、13℃で、融点が大きく異なります。o-キシレンとm-キシレンは室内で液体ですが、p-キシレンは室温が13℃以上では液体ですが、13℃以下では固体になります。 融点が室温より少ししか高くないものは、加熱すると液体になりやすく、蒸発もしやすいので、取扱方法に注意する必要があります。たとえば、フェノールの融点は43℃で、室温では固体ですが、少し温めると液化し、流動化します。 また、固体でも少しは蒸発(気化)します。融点の比較的高い固体のダイオキシン類でも少しづつ蒸発します。 とくに、融点が低い固体は室温でも蒸発し、融点が高くても加熱すると蒸発して、室内空気や大気を汚染しやすくなるので、毒性の高いものは注意が必要です。たとえば、防虫剤などに使われているp-ジクロロベンゼンの融点は53℃で、室内で固体ですが、かなり蒸発し、室内を汚染します。 なお、固体を温めても液化しないで(融点がなく)、どんどん気化してしまうものを昇華性物質といいます。このようなものには、融点のところに、昇華と表示しました。 たとえば、テレフタル酸や塩化第2水銀は昇華する物質です。 |
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1気圧で液体が沸騰する(蒸気圧が760Torrになる)温度を沸点といいます。 この値が室内温度(室温)以下であれば室内で気体、室温以上であれば室内で液体または固体です。 たとえば、水の沸点は100℃で、室温以上ですから水は通常の室内では液体または固体です。 なお、沸点以下の温度でも液体の一部が蒸発(気化)します。この気体になる程度は、後に示す蒸気圧で表されますが、詳しい数値がないときには、(1)式で沸点tb (℃)から希望の温度t (℃)でのおよその蒸気圧P(Torr)を推算することができます。なお、P/760は気圧(atm)単位の蒸気圧で、その100万倍がppm単位の濃度になります。 Log(P/760)=4.6{1−(273+tb)/(273+t )} (1) 沸点が低い液体は、蒸発しやすいので、室内空気や大気を汚染しやすいので取扱に注意が必要です。 たとえば、ジクロロメタンの沸点は40℃ですから、上の式で25℃での蒸気圧を推算すると、約446Torr、すなわち、0.586atm、586、000ppmもの蒸気圧になることが分かります。したがって、低温度で扱うか、密閉系で扱わないと室内汚染や大気汚染を起こしやすく、取り扱いに注意し、回収対策などが必要です。 また、このように沸点が室温付近の物質は、室温が低いときには液体で、タンクやドラム缶に入れられますが、室温が高くなると密閉容器では圧力が高くなりますので、注意が必要です。 なお、沸点の低い液体は、使用後に蒸発させることが容易であるため、塗料や接着剤など様々なものの溶剤、電子部品や精密機械部品などの工業資材の洗浄剤として広く使われ、使用後に揮発されています。このため、大気や室内空気を汚染しているものが多くあります。これらについては、少しでも沸点が高めの物質や毒性が低い物質を使う技術、活性炭などで回収し、再利用または分解・無害化する技術、水などで代替する技術などを利用することが望まれます。 |
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ある温度(通常は20℃付近)で、液体または固体が蒸発してどれだけの濃度(分圧)までなるかを蒸気圧といいます。 ここでは、トール(Torr)の単位で表示しましたが、mmHg(ミリメートル水銀)、パスカル(Pa)や気圧などの単位で表されていることもあります。TorrはmmHgと同じです。760Torrが101、325Paで1気圧です。蒸気圧が大きいほど蒸発しやすくなります。 たとえば、20℃での水の蒸気圧は17.5Torrですが、20℃でのトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンの蒸気圧は、それぞれ59Torrと14Torrですから、水よりトリクロロエチレンの方が蒸発しやすく、テトラクロロエチレンの方が蒸発しにくいことが分かります。 また、各物質をタンクなどの容器に入れておくと、その物質の上部の空気中には蒸気圧分の濃度の物質が含まれることになり、これが排気されると大気や室内空気の汚染の原因になります。 たとえば、20℃のトリクロロエチレンの液の上の空気中には最高で、59Torr、すなわち、59÷760=0.0776atm=77、600ppmの蒸気があります。分子量のところで説明した換算式で計算すると、これは423、000mg/m3に相当し、環境基準200mg/m3(0.2mg/m3)の2、000、000倍以上にもなります。 このように、蒸気圧が高い物質は、できるだけ密閉された機器、装置、設備で使用し、また、周囲への悪影響を避けるために、使用場所の局所排気を行い、活性炭などで回収し、再利用または分解・無害化処理を行う必要があります。 なお、蒸気圧P(Torr)の温度t(℃)による変化は、一般に(2)式のAntoine式で推算できます。 P=A−B/(t+C) (2) ここで、A、B、Cは物質によって決まった値で、主要な化合物についての値が化学便覧などに示されています。 なお、これらの値がない場合には、(1)式によって沸点からおよその蒸気圧を推算することができます。 |
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ある温度(通常は20℃付近)で、水に溶ける最大量(飽和量)を水に対する飽和溶解度(水溶解度と略称)といいます。 無機化合物については、飽和水溶液100gまたは1L中に溶けるグラム数、有機化合物については、水100gあるいは飽和水溶液の100g、または100mLに溶けるg数などの値で表されていることがあり、それぞれ異なった値が出されて混乱しやすくなっています。 そこで、本情報では、実用的になるように、全ての値を飽和水溶液1リットル中に溶けるミリグラム数(mg/L)に換算して表示しました。 この値は、飽和水溶液1立方メートルあたりに溶けるグラム数(g/m3)に相当し、大きいほど水に溶けやすく、排水に入りやすくなるので注意が必要です。たとえば、トリクロロエチレンの20℃での飽和溶解度は1、000mg/Lですから、トリクロロエチレンの液と接触している排水は、最高で1、000mg/Lの濃度になります。この値は、排水基準の0.3mg/Lの3、300倍にもなるので、適切な処理が必要です。 また、気化しやすい物質の水への溶解度Cws は、その水の上にある空気中の濃度Cas と(3)式のヘンリー(Henry)式から求められます。 Cas = H・Cws (3) なお、Cas の単位をパスカル(Pa)、Cws の単位を1リットルあたりのモル数(mol/m3)で表した場合のヘンリー定数H(Pa・m3/mol)の値が示されていることが多いのですが、Ca を(mg/m3)、Cw を(mg/L)という実用的な単位にした場合のヘンリー定数H'(L/m3)は、H'=1000H/8.31(273+t)となり、20℃ではH'=0.41Hとなります。 また、H'は蒸気圧P(Torr)、飽和溶解度Cs および分子量M(g/mol)とから、16、000M・P/Cs (273+t)、20℃では54.6M・P/Cs(mg/L)によって、およその値を推算できます。 この値が大きいほど、排水などから気化しやすく、逆にこの値が小さいほど、空気中から水に溶けやすくなりますので、この値を考えた排水などの取り扱いが必要です。 |
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ある物質をオクタノールと水の体積1:1の液に入れた場合にオクタノールに溶ける量(濃度)が水に溶ける量(濃度)の何倍になるかをオクタノール-水分配係数Powといいます。 このPowは化合物によって桁違いに異なりますので、一般にその対数値LogPowで表示されています。たとえば、LogPowが2の物質は、Powが10の2乗の100で、水よりオクタノールに100倍溶けやすいことを示しています。本情報でもLogPowを表示しました。 この値は、水よりも脂肪などに溶けやすい程度を示しますので、この値が大きいほど生物の体内へたまりやすくなり、また、土などに吸着しやすく、自然界での分解性が低くなる傾向があります。 たとえば、トルエンのLogPowは2.69ですが、塩化ビニルの可塑剤に広く使われているフタル酸ビス(2-へキシル)のLogPowは3.98、PCB類のLogPowは6から8程度で、PCB類は非常に生物にたまりやすく、環境中での残留性も高いと考えられます。 LogPowが大きい物質は、長期的な毒性が高く、環境中に残留しやすいものが多いので、取り扱いには十分注意する必要があります。 |
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成層圏オゾン層の破壊能力をフロン-11(トリクロロフルオロメタン)と比べた値をオゾン層破壊係数ODPといいます。 たとえば、冷蔵庫やカーエアコンに使われているフロン-12(ジクロロジフルオロメタン)のODPは1.0、ルームエアコンに使われているフロン-22(クロロジフルオロメタン)のODPは0.055、ビルの消火剤に使われているハロン1301(ブロモトリフルオロメタン)のODPは10です。 これらが大きいものは、オゾン層を壊しやすいので、必ず回収し、分解・無害化する必要があります。なお、最近多く使われるようになったODPが小さかったり、ゼロのフロン類も地球を温暖化する力が強いので、回収が必要です。 |
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化学物質の物性に関する情報源は複数あり、本来唯一であるはずの値が情報源によって異なることも多くあります。このため、情報源を選択する際の優先順位を決めておく必要があります。ここでは、信頼できる国際機関や学会の情報を優先し、次に、国レベルで作成されている資料集やデータベース、それもなければ公共的機関で作成している資料集やデータベースを用い、これらも全くない場合にのみ歴史のある商用データベースの値を吟味して用いることとしました。 表16 物性値の情報源と利用した物性情報の種類
これらの情報源のうち、国際化学物質安全性カード(ICSC)や、米国環境保護庁(U.S.EPA)のEPI Suiteの実測推奨値(EPI実測値)を優先し、さらに、国連環境計画(UNEP)、米国化学会のChemical Abstracts Service(CAS)、英国王立化学会のDictionary of Substances and Their Effects(DOSE)と英国作物保護会議のThe e-Pesticide Manual(Pest M)、日本化学会の「化学便覧」、U.S.EPAのHealth Advisories (HA)と Document(TRI)、経済産業省の化審法データ集(化審法)、厚生省の毒劇物の手引(毒劇手引)、日本植物防疫協会の農薬ハンドブック(農薬HB)の順で採用し、これらがない場合には、Cambridge Soft社の化学物質の検索エンジンThe Chem Finder Web Server(Chem F)の値、およびSaugeten Research Lab.(SRL)から市販されているPowデータベースを利用しました。ただし、一部の物質の分子量は、組成式から計算しました。 |
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用 途 |
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PRTR対象物質の用途については、環境省や経済産業省およびそれらの関係団体、あるいは地方自治体のホームページなどに掲載されています。また、化学工業日報社発行の「14303の化学商品」などにも掲載されています。 しかし、用途の分類の方法が非常に混乱していて分かりにくくなっており、誤りも多数見受けられます。 たとえば、「界面活性剤」と界面活性剤を含む「合成洗剤」が区別されずに混ざった記載がされていたり、農薬の「有効成分(原体)」として使われている物質と農薬の「合成原料」として使われている物質の両方の用途が「農薬」と記されていたり、染料そのものではなく、染料の合成原料となる物質の用途が「染料」と記されていたり、プラスチックの可塑剤の用途が「可塑剤」、「プラスチック」、あるいは「プラスチック添加剤」と混ざった記載がされていたり、「合成繊維の原料」の用途を「プラスチック」、「繊維」、「衣料品」と混ざった記載がされていたりします。また、ただ「合成原料」とだけ記されている物質もあったりするなど、非常に混乱していて、正しく整理されている情報はありません。 すなわち、(a)その物質が合成原料として使われる工業用基礎材料や副資材名、(b)製造・加工時に添加または処理される工業基礎材料名、(c)その物質の持つ機能を示す剤名、(d)その物質が使われている最終的製品名などが明確に区別されずに表記されており、非常に分かりにくくなっています。 そこで、ここでは、農薬以外の物質で工業用基礎材料・副資材として使われる物質については、以下のように、使用目的を明確に表記するように統一し、界面活性剤や可塑剤、安定剤などの機能では表記しないことにしました。
また、最終工業製品に加えられている物質については、以下のように、用途を工業製品名で表記するように統一しました。
さらに、作りたくないのに出来てしまう物質(副生成物質または非意図的生成物質という)については、以下のように排出源別に表記しました。
一方、農薬については、(a)「殺菌剤」、(b)「殺虫剤」、(c)「除草剤」などの機能で用途を表記することにしました。 |
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全国及び各都道府県での農薬の使用量に、人に対する水経由の毒性重み付け係数または水生生物に対する毒性重み付け係数をかけて求められた、全国および「各都道府県での農薬の毒性重み付け使用量・その順位と主原因5物質」 ![]() |
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毒性重み付け農薬使用量 参照 |
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