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日本の動き

エコケミストリー研究会の情報誌「化学物質と環境」RADAR に掲載した情報を紹介しています。
下記の情報をご利用になる場合は、各情報元をご確認下さい。

最新号:2024年3月号
環境省の「第六次環境基本計画(案)の公表及び本案に対する意見の募集について」
環境省が「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」を公表

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2024年3月号(No.184)

環境省の「第六次環境基本計画(案)の公表及び本案に対する意見の募集について」
  環境省は3月12日に第六次環境基本計画(案)、および案に対する意見募集のお知らせを公表した。
「本計画は強い『危機感』に基づいている。」これは本計画案の冒頭第一文である。現在は、気候変動、生物多様性の損失、環境の汚染の三つの危機に直面しており、ローマクラブによる「成長の限界」、国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」など、実に50年以上前から先人達が警鐘を鳴らしていた状況が現実のものとなり、地球の環境収容力(プラネタリー・バウンダリー)を超えつつある。我が国に目を移せば、本格的な高齢化、人口減少社会への突入、都市への集中、経済状況の変化が生じている。
 そのような状況の中で、循環共生型社会(環境・生命文明社会)を目指すとしている。それは「『循環』と『共生』を始め、累代の環境基本計画が目指してきた概念を発展させ、環境を基盤とし、環境を軸とした環境・経済・社会の統合的向上への高度化を図り、環境収容力を守り環境の質を上げることによって経済社会が成長・発展できる文明を実現していく。」ものであるとしている。
 本誌の発行タイミングでは、意見募集の締め切りには間に合わないかもしれないが、我が国の方向性を示した大作となっている。この計画実施には、おそらくすべてのステークホルダーの協働が必要となるので、ぜひ目を多くの方々に通していただきたい。(文責:浦野 真弥)

環境省が「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」を公表
 環境省は3月15日に表記の法律案を閣議決定したことを公表した。
資源循環は、カーボンニュートラルのみならず、経済安全保障や地方創生など社会的課題の解決に貢献でき、あらゆる分野で実現する必要がある。欧州を中心に世界では、再生材の利用を求める動きが拡大しており、対応が遅れれば成長機会を逸失する可能性が高く、我が国としても、再生材の質と量の確保を通じて資源循環の産業競争力を強化することが重要となる。
 本法律案では、脱炭素化と再生資源の質と量の確保等の資源循環の取り組みを一体的に促進するため、 基本方針の策定、再資源化の促進(底上げ)、再資源化事業等の高度化の促進(引き上げ)の措置を講ずるとしている。具体的には、再資源化事業等の高度化の促進に関する判断基準の策定・公表、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施の状況の報告及び公表、再資源化事業等の高度化に係る国が一括して認定を行う制度を創設し、生活環境の保全に支障がないよう措置を講じさせた上で、廃棄物処理法の廃棄物処分業の許可等の各種許可の手続の特例を設けるとしている。
 本法律案は第213回通常国会に提出される予定となっている。資源循環については、国民の循環資源に対する認知と理解も重要であり、再資源化業者に任せて終わりにならない形での高度化が望まれる。(文責:浦野 真弥)


2024年1月号(No.183)

「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律施行令」の閣議決定と「住宅省エネ2024キャンペーン」の開始
 脱炭素に向けて社会を変革するための法律として2023年5月に公布された「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」の脱炭素成長型経済構造移行推進機構(GX推進機構)の設立等に係る規定の施行日が2024年2月16日に定められ、また同法の施行令が2023年12月22日に閣議決定された。
 施行令では、GX推進機構が行う金融支援業務の支援決定の際、支援額が200億円を超える場合に経済産業大臣への意見照会を行うことや、中間事業年度(政令により2040年度と規定)における国庫納付の手続等、GX推進機構の機構債の発行の方法等を定めている。
 また、2023年12月26日には家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入等の住宅省エネ化を経済産業省と国土交通省と環境省の3省の連携で支援する「住宅省エネ2024キャンペーン」を2023年12月27日より開始し、同日よりキャンペーンホームページに加え、経済産業省が実施する「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業(給湯省エネ2024事業)」、「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(賃貸集合給湯省エネ2024事業)」に関する個別ホームページを開設することが公表された。
 これらの法律やキャンペーンは、大規模な脱炭素投資を伴うもので、積極的な活用により脱炭素社会への転換が加速されることが望まれる。(文責:浦野 真弥)

環境省が「第18回『化学物質と環境に関する政策対話』」を開催
 環境省は2023年12月27日に表記の政策対話を開催した。
 国際的な戦略・行動計画である国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の中で、化学物質の環境安全について、政策の透明性・説明責任を確保する観点から、多様な主体による政策決定プロセスへの参加が求められていた。わが国では「化学物質と環境円卓会議」を経て、2011年度から、市民、労働者、事業者、行政、学識経験者等の様々な主体により化学物質と環境に関して意見交換を行い、合意形成を目指す場として、当該政策対話が設置されている。
 今回は、SAICMの後継となる枠組みとして、2023年9月にICCM5で採択された「Global Framework on Chemicals ? For a Planet Free of Harm from Chemicals and Waste(GFC)」の概要及びSAICMからの進展・特徴について共有し、今後議論を深めるべき話題について意見交換がなされた。
また、PFASや最近合意された水俣条約による規制対象製品の追加など国内外の個別課題の動向について情報の共有がなされ、さらに委員から、GFCでライフサイクルを通じたデータ・情報の共有や循環経済との関係が取り上げられていることを受けて、検討事例についての情報共有がなされた。
SAICMを経て化学物質管理は次のステージに向かう。ステークホルダーが連携してライフサイクルを通じて安全に化学物質を利用できる社会に近づけることが望まれる。(文責:浦野 真弥)


2023年11月号(No.182)

環境省が「第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)の結果について」を公表
 環境省は、表記の結果を10月5日に公表した。
 ICCM4開催後、2020年以降の新たな枠組みについて会期間プロセス会合にて議論が行われていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大幅に遅延していた。今回、ようやくICCM5が開催され、今後の化学物質の適正管理に関し、自主的かつ多様な主体が関与する2020年以降の世界的な新たな枠組み「Global Framework on Chemicals (GFC) For a Planet Free of Harm from Chemicals and Waste」が採択された。
 GFCでは、(1)多様な分野(環境、経済、社会、保健、農業、労働等)における多様な主体(政府、政府間組織、市民社会、産業界、学術界等)によるライフサイクルを通じた化学物質管理の枠組みの構築、(2)5つの戦略的目的(a.能力・法制度の整備、b.知識・情報・データ、c.懸念課題、d.より安全な代替、e.意思決定プロセスへの統合)とそれを実現するための個別目標の設定、(3)実施に当たっての支援メカニズム、懸念課題の特定、能力形成の方法を設定、(4)資金確保に関しての統合的アプローチ(民間セクターの関与、基金の活用など)、(5)透明性があり利用しやすいオンラインツールを導入した進捗報告・開示や進捗を適切に把握するための測定枠組みの設置が定められた。
 WSSD2020年目標に対して、進展はしたものの達成にはまだ遠い状況にある。化学物質の利用は益々増加しており、既存の仕組みからの転換も進められている。新たな科学的情報を取り込みながら、ヒトや生態系に安全な形で管理制度が進化していくことが望まれる。(文責:浦野 真弥)

環境省が「『新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針』(中央環境審議会意見具申)について」を公表
 環境省は、中央環境審議会循環型社会部会で審議されていた第四次循環型社会形成推進基本計画の見直しに向けた表記の具体的な指針が10月17日に環境大臣へ意見具申されたことを公表した。
 意見具申では、環境保全を前提とした循環型社会形成に向けて中長期的な方向性を設定し、そこからバックキャスティング的に検討し、現在中央環境審議会において策定に向けて議論を行っている第六次環境基本計画とも整合を取りながら、(1)循環型社会形成に向けた循環経済への移行による持続可能な地域と社会づくり、(2)動静脈連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環、(3)多種多様な地域の循環システムの構築と地方創生の実現、(41)資源循環・廃棄物管理基盤の強靱化と着実な適正処理・環境再生の実行、(5)適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進、(6)指標・数値目標に基づく評価・点検について政府を挙げて戦略的に進める必要があるとしている。
 従来進めてきた天然資源の消費を抑制し、環境負荷ができる限り低減される循環型社会の形成に向けた取り組みに加えて、循環のサービス化などの視点を加えた循環経済と、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブも加えた統合的な施策が求められており、従来型の個別課題の積み上げでは対応ができなくなっている。中長期的な社会を描いたうえで、複合的な視座に立った政策立案と社会実装に期待したい。(文責:浦野 真弥)


2023年9月号(No.181)

環境省が「『PFOS、PFOAに関するQ&A集』及び『PFASに関する今後の対応の方向性』等について」を公表
 環境省は、表記のQ&A集およびPFASに関する今後の対応の方向性を7月31日に公表した。
 有機フッ素化合物の一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があり、動物実験での肝臓の機能や仔動物の体重減少等への影響が、人でのコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が報告されているが、どの程度の量が身体に入ると影響が出るかについては確定的な知見がない。
 一方、環境省や都道府県等が実施した調査において、河川・地下水等の水環境でPFOS、PFOAの暫定目標値(50ng/L)を超過する事例が確認されており、住民の不安に寄添う透明性のある適切な情報発信として、専門家会議の監修のもとでQ&A集が作成され公表された。
 また、PFAS(ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル化合物)についても、我が国における今後の対応策について対応の方向性としてとりまとめている。この中では、PFOS、PFOAの市中在庫量の把握や代替促進、環境流出防止などの管理の在り方や暫定目標値等を超過している地域の対応の方向性、今後の調査強化方針、PFOS、PFOA以外のPFASへの対応などが示されている。
 PFASは物質数が多く広範囲な対応が必要になることが想定されるが、科学的な知見に基づく適切な管理の推進が望まれる。(文責:浦野 真弥)

環境省が「令和5年度第1回エコチル調査企画評価委員会」を開催
 環境省は、9月13日に表記の委員会を開催した。
 2011年から実施されている子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)であるが、2023年7月時点で英語原著論文が385編、そのうち中心仮説「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとする環境因子が、妊娠・生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているのではないか」に関連する論文が44編発表されており、順調に研究が進展している。
 表記のエコチル調査企画評価委員会は、エコチル調査全体について、第三者的な観点から評価を行うもので、今回は、環境省からこれまでのエコチル調査の状況や広報などの活動整理がなされ、コアセンターから調査の進捗報告や、今後の取り組みについて説明がなされ、第四次中間評価の進め方について議論が行われた。調査が当初計画の終盤に差し掛かり、成果論文の発表や広報活動の重要性が増していることから、これらの評価にも重点が置かれた。
 エコチル調査は、当初計画の13歳までから延長が決定され、2023年5月に基本計画が改定されている。大規模かつ広範な本調査は、化学物質の健康影響を知る上で非常に重要であり、是非、本誌読者にも委員会の資料やエコチル調査ホームページ等を参照して内容を知っていただき、今後も成果に注目していただきたい。(文責:浦野 真弥)


2023年7月号(No.180)

環境省が「今後の水・大気環境行政の在り方について(意見具申)」を公表
 環境省は、今後の水・大気環境行政の在り方についての中央環境審議会大気・騒音振動部会、水環境・土壌農薬部会における審議の結果を受けて、中央環境審議会会長から環境大臣へなされた意見具申を6月30日に公表した。
 令和5年度に水・大気環境局の組織再編が行われることとなっていること、および中央環境審議会において第六次環境基本計画の策定に向けた議論が行われることから、当該議論に向けたインプットを統合的に行っていくため、それぞれの部会での議論を踏まえつつ、大気・騒音振動部会及び水環境・土壌農薬部会が合同で開催され、両部会の所掌に共通する課題(1.環境基準の達成、見直し等、2.良好な環境の創出、3.水、土壌、大気の媒体横断的な課題への対応、40デジタル技術を活用した環境管理、5.その他)を中心に、今後の水・大気環境行政の在り方について議論が行われた。
 大気環境保全の重点課題として、1.大気質、2.有害大気汚染物質・石綿・水銀、3.悪臭・騒音、4.国際協力が挙げられ、水・土壌環境保全の重点課題として、1.公共用水域、2.土壌・地下水、3.農薬、4.PFAS、5.水道水質・衛生、6.薬剤耐性(AMR)、7.国際協力が挙げられた。
 これらの大気、水、土壌などの分野での重点課題に取り組みつつ、気候変動対応や生物多様性の保全、効率的な資源利用を進めるために統合的かつ横断的な取り組みがますます求められる。科学的知見の充実に加えて、新たな技術も活用して、新しい枠組みでの取り組みを進めることも求められよう。(文責:浦野 真弥)

環境省と経済産業省が「カーボンフットプリント ガイドライン (別冊)CFP実践ガイド」を公表
 環境省と経済産業省は、5月26日に連名でカーボンフットプリント 実践ガイドを公表した。
 経済産業省では、「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」を開催し、そのとりまとめとして、1.「カーボンフットプリント レポート」、および2.「カーボンフットプリント ガイドライン」を3月31日に公表したが、このうち、カーボンフットプリント ガイドラインの「(別冊)実践ガイド」については、後日公開としていた。
 本実践ガイドでは、カーボンフットプリント ガイドライン第2部の「基礎要件」を満たす算定方法、表示・開示方法や排出削減の検討方法について解説している。また、この算定方法で行ったモデル事業での工夫をAppendixに示すとともに、そこから得られた知見も含め、実践ガイドとして整理している。
 温室効果ガス(GHG)の排出量削減目標を達成するためには、社会活動の様々な場面でGHG排出量を算出して、排出量を削減するための改善を進めると同時に、表示として活用され、消費者の製品選択にも利用できる環境を整備することが必要と考えられる。そのためには、この様な実践的なガイドラインは有効であり、公平な形で広く利用されていくことが望まれる。(文責:浦野 真弥)


2023年5月号(No.179)

環境省が「ストックホルム条約、バーゼル条約及びロッテルダム条約締約国会議の結果について」を公表
 環境省は、5月16日に表記の3条約の締約国会議の結果を公表した。
 化学物質および廃棄物に関連する表記3条約の締約国会議は、ジュネーブで5月1日から12日に開催された。会合では、条約ごとに技術的な議題、運用上の課題などについて議論が行われたほか、3条約共通の技術協力や条約間の連携の強化による効率的な対策の実施についての議論が行われた。
 ストックホルム条約については、難燃剤などに用いられた「デクロランプラス」、紫外線吸収剤などに用いられた「UV-328」及び殺虫剤などに用いられた「メトキシクロル」の条約附属書Aへの追加が採択された。この決定を受けて、各加盟国は対象物質の製造、使用等を規制することになる。なお、デクロランプラス、UV-328については、一部の用途について除外規定が設けられた。
 バーゼル条約については、POPs廃棄物、電気・電子機器廃棄物(e-waste)、プラスチック廃棄物に関する各技術ガイドラインの採択、輸出相手国への事前通告・輸入国における同意回答手続(PIC手続)の改善に係る議論等が行われた。
 ロッテルダム条約については、輸出手続が必要となる対象物質に「テルブホス」が追加された。
 POPsに限った話ではないが、化学物質によるヒト健康や生態系影響を防止する仕組みについては、転換期を迎えているように感じられる。今後も多面的な議論が進められ、現在の科学的知見に立脚した、より合理的な化学物質管理制度を構築していくことが望まれる。(文責:浦野 真弥)

米国環境保護庁(EPA)がエチレンオキシドの新しい基準を提案
 EPAは4月11日にエチレンオキシド(以下、EtO)の大気排出量を80%削減し、労働者の暴露を低減する新しい基準を提案した。
 EtOは医療器具や特定のスパイスの滅菌用途で使用される化学物質でヒトへの発がん性がある。今回の提案が確定すれば、商業滅菌施設からの大気へのEtO排出量を年間80%削減し、その排出を法の下で包括的に抑制することによって、EtOを扱う労働者や排出施設の周辺住民の暴露リスクを減少させることが期待される。
 管理措置案の概要は、(1)博物館、記録文書保存、養蜂、一部の化粧品、楽器での使用など、代替手段が存在する場合のEtOの使用の禁止、(2)無菌基準を満たしつつ、医療機器の滅菌に適用される可能性のあるEtO量の削減、(3)自動化や排出把握技術などEtOへの労働者の暴露を減らすエンジニアリング制御の要求、(4)最先端の監視技術の使用とEtO検出時の滅菌施設での個人用保護具(PPE)の義務付けである。
 日本でも、昨年9月からエチレンオキシドの大気放出量の削減および環境濃度の低減について、有害大気汚染物質排出抑制対策等専門委員会で議論が進められている。日本では自主的な取り組みを軸に検討されているが、用途がやや限定的な化学物質であるため、高排出地域におけるモニタリングや自主的な削減効果の見極めが求められる。(文責:浦野 真弥)


2023年3月号(No.178)

環境省が「令和3年度PRTRデータの概要等について−化学物質の排出量・移動量の集計結果等−」を公表
 環境省は、3月3日に経済産業省と共同で化学物質排出・移動量届出(PRTR)制度に基づく化学物質の令和3年度の排出量・移動量等のデータの集計等を行い、その結果を取りまとめて公表した。
 令和3年度の届出は全国32,729の事業所から行われ、届出排出量は125千トン(前年度比0.8%の増加)、届出移動量は259千トン(同12.6%の増加)、その合計は384千トン(同8.5%の増加)となった。なお、届出事業所数は32,729で微減(前年比△161事業所)で、特に燃料小売業の減少(△106事業所)が大きかった。
 排出移動量は前年度比で増加しているが、これは令和2年度の排出移動量がコロナ禍での経済活動の減少によって下がっているためで、令和元年度と比較すると大きくは変わっていない。
 来年度(令和5年4月1日)からは、462物質から515物質に見直された新たなPRTR届出対象物質の集計が始まる。また、右段にもあるように労働安全衛生法における化学物質管理の在り方も、これまでの個別の物質の規制から有害危険情報に基づく自主管理に大きく転換する。
 エコケミストリー研究会では、今後も化学物質の規制や管理、ヒト影響や環境影響に関する最新情報や研究動向の発信、PRTR排出移動量データおよび最新の毒性情報に基づいたヒトや水生生物への毒性重みづけ排出量の算定結果や、その経年変化などについて公表していく予定であるので、事業所や自治体等での化学物質管理、市民の学習等にご活用いただきたい。(文責:浦野 真弥)

厚生労働省が「令和4年度化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書を公表
 厚生労働省は2月10日に表記の報告書を公表した。
 この報告書は、昨年5月に公布された労働安全衛生法で示された、事業者が危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、講ずべき措置を適切に実施する新たな化学物質規制を円滑に施行するため、技術的な事項を専門家が検討した結果をとりまとめたものとなっている。
 改正労働安全衛生法で、リスクアセスメントの実施が義務付けられている物質に労働者がばく露される程度を厚生労働大臣が定める基準以下としなければならないことが規定されたことを踏まえ、報告書では、物質ごとのばく露の濃度の基準値(濃度基準値)とその適用の考え方や、今後の濃度基準値設定の進め方などを整理している。この中では、混合物への濃度基準を適用する場合の考え方、蒸気とエアロゾルが共存する場合の濃度の考え方、発がん性区分2の物質に対する考え方なども含まれている。濃度基準については、特別則が適用されない物質について、令和4年度には118物質が検討され、67物質について濃度基準と測定方法が定められ、33物質は令和5年度以降に再検討することとされた。令和5年度には新たに160物質、6年度には180物質、7年度以降は390物質について対象として検討する予定となっている。
 厚生労働省は、この報告書で提言された事項を法令などに盛り込み、化学物質による労働者の健康障害防止対策を一層充実していくとしている。(文責:浦野 真弥)


2023年1月号(No.177)

環境省が「水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について公表
 環境省は12月20日に表記の閣議決定を公表した。
 水質汚濁防止法では、「公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質」を指定物質として規定しており、現在、水質汚濁防止法施行令(以下、施行令)において56物質を定めている。
 「水質汚濁防止法に基づく事故時の措置及びその対象物質について(答申)」(2011年2月中央環境審議会)により、環境基準や要監視項目等に設定された物質が指定対象とされていることを受けて、要監視項目等に新たに位置づけられたアニリン等の4物質を指定物質に指定することが適当とされ、指定物質の見直しに伴う施行令の一部を改正する政令が閣議決定された。
 本改正により、令第3条の3において定める指定物質にアニリン、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びその塩、並びに直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)及びその塩の4物質が追加されることとなった。
 PFOS及びPFOAについては、その毒性や長期残留性から国際的にも注目されており、国内においても汚染事例も多く報告されてきている。事故等により、公共用水域に多量に排出されると、人の健康や生活環境に被害が出るおそれがあるが、今回の指定によって水質事故等の発生時に直ちに流出防止等の応急の措置が講じられ、自治体に届け出がされることから、水質事故に対する迅速な対応ができることとなった。なお、施行は2023年2月1日となっている。(文責:浦野 真弥)

農林水産省と国土交通省が「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」の論点を整理公表
 農林水産省及び国土交通省は、関係機関と連携し、下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた推進策の検討を目的とした「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」を2022年10月から計3回開催してきた。この検討会で出された課題と取組の方向性を取りまとめた論点整理を1月20日に公表した。
 検討会の結果も踏まえて2022年12月27日に決定された食料安全保障強化政策大綱では、2030年までに堆肥・下水汚泥資源の使用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大することが目標に定められた。
 その推進のための論点として、汚泥肥料に対する社会的な受容性にかかわるイメージの改善や理解の促進、推進体制の強化、利用促進、コスト低減や品質の管理、技術開発、規格等について、それぞれ課題を整理し、速やかに実行する必要がある取り組みと、今後検討する必要がある取り組みを取りまとめている。
 かなり以前から、下水汚泥中に含まれるリン資源の有効活用は検討されてきたが、品質懸念や需給バランス、社会受容性などの課題があって進んでいなかった。昨今の中国の政策転換に伴うリン価格の上昇や、我が国の中長期的な食糧戦略などもあり、具体的に進める機運が高まっている。社会での廃棄物由来資源の受容性を高める観点からも推進が望まれる。(文責:浦野 真弥)


2022年11月号(No.176)

環境省が「生物多様性に関する世論調査」の結果を公表
 環境省は、10月14日に表記の調査結果を公表した。
 この調査は2022年7月から8月に、生物多様性に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とすることを目的として、全国18歳以上の日本国籍を有する者3,000人に郵送配布で実施された。調査の項目は、「(1)自然に対する関心・認識について」、「(2)生物多様性に対する認知度・関心について」、「(3)生物多様性保全のための取組について」となっている。
 自然への関心は75.3%が、ある程度以上、もしくは非常にあると答えている。性別では男性の方が関心度がやや高い傾向を示しており、年代別では40代以上で関心が高い結果を示している。
 自然の働きで重要だと考えるものについては、CO2や大気汚染物質の吸収などの大気や気候を調整する働き(66.9%)、水資源の供給・水質浄化の働き(60.8%)、動物・植物など生物の生息・生育地としての働き(47.3%)が高い割合を占めていた。
 生物多様性については、言葉の意味を知っている人が全体で29.4%と低めで、性別では女性で低めの傾向があり、年齢では40代以上で低めの結果を示していた。
 過去の調査からの推移を見ると、生物多様性の認知割合は徐々に向上していることが示されているが、保全の取り組みについては、何をしたら良いか分からないという回答が多く、依然として実施率が低い。40代以上は自然への関心は高いが、生物多様性の言葉の意味の認識は低めであるなどのギャップもあり、その意味や行動との関係について啓蒙活動を続けることが必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)

農林水産省が「お店で見つけて!温室効果ガス削減の『見える化』ラベルについて」を公表
 農林水産省は、10月26日に表記のラベルについて公表した。
 これまで、農業由来の温室効果ガス削減の取り組みを行っている生産者の努力が的確に評価される方法や、その努力を分かりやすく消費者に伝える方法がなかった。このラベルは、農作物栽培時の温室効果ガス削減の取り組みについて、その削減効果を星の数で表示(見える化)するもので、秋から年末にかけてこのラベルを付けた米、トマト、キュウリが店頭に並ぶことを広報している。また、温室効果ガスを削減して栽培された農産物の実証に関し、生産者の環境配慮の取り組みや販売先がわかるWEBサイトを開設したことを通知している。
 サイトでは取り組みの例として、水田の効果的な水管理や化学肥料・化学農薬の低減、バイオ炭施用、暖房等での化石燃料の使用削減について、その内容や効果について記載されている。国の「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、温室効果ガス削減効果を分かりやすく情報発信することで、消費者が地球環境に良い農産物を選択できる環境を整えていくとしている。
 まだ、一部の地域、店舗、期間での実施だが、他の消費者製品の温室効果ガスの排出量の表示も進みつつあり、農産品についても取り組みが進められることが望まれる。(文責:浦野 真弥)


2022年9月号(No.175)

環境省が「株式会社脱炭素化支援機構の設立の認可について」を公表
 環境省は、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)第36条の9に基づき、株式会社脱炭素化支援機構の発起人((株)日本政策投資銀行、(株)みずほ銀行、(株)三井住友銀行及び(株)三菱UFJ銀行)から認可申請のあった同機構の設立について、9月14日付けで認可したことを同日に公表した。
 環境省は、地球温暖化対策の更なる推進を目的として、脱炭素化につながる様々な事業活動に対して、資金供給やその他の支援を行う株式会社脱炭素化支援機構を設立すべく、準備を進めてきた。
 本機構は、脱炭素化に貢献するものの前例に乏しく投融資の判断が難しい、認知度が低く関係者の理解が得られにくい等の理由から民間での資金調達が難しい事業に対しても資金供給を行い、民間資金の呼び込みを図っていく予定となっている。
 機構設立後の実効的な運営の準備の一つとして、脱炭素化支援機構からの資金供給を受ける資金ニーズの情報を、設立までの段階では環境省にて受け付けている。資金ニーズがある事業者等は、所定の様式に、実施者・資金使途・額・時期・収益構造等の情報等を記入して提出することができる。
 脱炭素に向けた急激な社会転換の中で、様々な資金需要が生じるものと思われる。その中で国や金融機関が一体となって、脱炭素に対応した変革を後押しすることが望まれるが、急激な変化には不透明さも付きまとう。同機構が実現性や実効性、発展性を見極め、技術開発、技術の社会実装などにおいて確かな役割を担っていくことが期待される。(文責:浦野 真弥)

環境省が「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業への参加企業決定について」を公表
 2021年6月に策定された「地域脱炭素ロードマップ」においては、国民が脱炭素に貢献する製品・サービスを選択できる社会を実現するとされている。そのため、環境省は、製品・サービスのライフサイクルを通じた温室効果ガス排出量の算定・表示(CFP:カーボンフットプリント)に取り組み、排出削減やビジネス成長を目指す企業を支援するモデル事業への参加企業の募集を6月27日から約一か月間行っていた。これに対して7件の応募があり、業種、事業内容、本事業で取り組みたい内容、脱炭素経営の取組状況等を総合的に勘案し、(株)コーセー、東京吉岡(株)、明治ホールディングス(株)、(株)ユナイテッドアローズを参加企業として決定したことを8月5日に公表した。
 本事業の参加企業は支援を受けながら、@自社製品・サービスのCFPの算定・表示、ACFPに係る基準やサプライヤーへの働きかけの検討(小売事業者向け)のいずれかの取り組みを実施することになっており、環境省は、この事業により製品・サービスのCFPの算定及び表示・活用に関する先進的なロールモデルを創出することで、我が国におけるCFPの取組拡大や、脱炭素に貢献する製品・サービスの選択を促すことを目指している。
 欧州では統合的な環境フットプリントの制度化が模索されており、今後の変化も考えられるが、この様な製品表示は、企業、社会に転換を促す大きな動きになりうるだろう。(文責:浦野 真弥)


2022年7月号(No.174)

環境省が「令和3年度プラスチックの資源循環に関する先進的モデル形成支援事業の結果について」を公表
 環境省は、6月27日に表記の事業結果を公表した。
 環境省では、プラスチック資源の分別収集・リサイクルの推進に資する先進的なモデル形成に取り組む市区町村を支援するため、2021年8月から2022年2月までの間、「令和3年度プラスチックの資源循環に関する先進的モデル形成支援事業」を実施した。本発表は、この事業で採択した6市(長野県松本市、静岡県静岡市、京都府京都市、京都府亀岡市、大阪府大阪市、岡山県倉敷市)における実証事業等の結果を取りまとめたものとなっている。
 事業結果では、プラスチック容器包装とプラスチック製品の同時回収における組成分析の結果や異物混入の状況、広報の効果、種々シナリオにおけるコスト分析、二酸化炭素排出量削減効果、再商品化事業者へのヒアリング結果など、各市の取り組みの結果の要点が数値とともに取りまとめられている。コスト面では収集運搬や再資源化の費用、売電収入の減少などで上昇する試算が多く見られたが、シナリオによっては現行に対してマイナスになるものも見られている。また、二酸化炭素排出量は減少する試算結果が多く示されていた。
 本誌においても仙台市の先進的な取り組みをご紹介いただいたが、プラスチックの分別が理解しやすくなったという声が聞かれる半面、コストや制度の構築に向けた課題はまだありそうである。地域ごとに市民や再資源化事業者と連携して、効果的な資源循環が達成されることが望まれる。(文責:浦野 真弥)

環境省が「『家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討について』(中央環境審議会意見具申)について」を公表
 環境省は、6月23日に表記の意見具申を公表した。
 特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)については、前回の見直しから5年が経過し、再度見直しを行うべき時期が到来したため、2021年4月から、家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討について審議が進められ、2022年3月に「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」が取りまとめられ、同案について、パブリック・コメント手続を2022年3月11日から同年4月10日までの間で実施された。その結果も踏まえて中央環境審議会から環境大臣に意見具申された。
 引き取り台数は6年連続で増加しており、回収率目標値(2018年度:56%)を達成し、2019年度も64.1%とさらに増加している。不法投棄の台数も法施行前に対して42.4%まで減少しており、取り組みの成果がみられている。
 一方、対象品目の拡大、インターネット販売など多様な販売形態をとる事業者への対応、回収率が37.6%と低いエアコンへの対応、家電リサイクル制度の循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行、2050年カーボンニュートラルに向けた家電リサイクル全体での脱炭素化などが課題として挙げられて検討された。
 社会の変化に対応したより低負荷で円滑な制度に発展し、低負荷循環システムのモデルになっていくことが期待される。(文責:浦野 真弥)


2022年5月号(No.173)

厚生労働省が「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」の答申結果を公表
 厚生労働省は、3月23日に「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」について、労働政策審議会より妥当であるとの答申があったことを公表した。
 本改正案は、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」(2021年7月19日公表)において、化学物質による労働災害を防止するために必要な規制のあり方が提示されたことを受け、当該報告書に基づき、労働安全衛生規則等における規定について、見直しを行うものであり、厚生労働省は、この答申を踏まえて、関係省令の改正作業を進めるとしている。
 主な改正のポイントは、労働安全衛生規則関係では、(1)事業場における化学物質の管理体制の強化、(2)化学物質の危険性・有害性に関する情報伝達の強化、(3)リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化、(4)化学物質の自律的な管理の状況に関する労使等のモニタリングの強化となっている。有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則等の関係では、(1)管理の水準が一定以上の事業場に対する個別規制の適用除外、(2)作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する作業環境の改善措置の強化、(3)作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合における特殊健康診断の実施頻度の緩和となっている。なお、施行は2023年4月1日、もしくは2024年4月1日となっている。
 この改正では、事業場における化学物質の取り扱いに大きな変更を伴うので、施行までに準備を進めることが求められる。(文責:浦野 真弥)

「環境基準等の設定に関する資料集」の公開について
 環境省は、国立環境研究所が3月30日に表記の資料集を公開したことを紹介した。
 1969年2月に、いおう酸化物に係る環境基準が閣議決定により最初に定められて以降、多くの項目について環境基準や、それに準ずる指針値の設定・改定が行われてきたが、その経緯や設定根拠については、資料として一元的に取りまとめられていなかった。
 「環境基準等の設定に関する資料集」は、国立環境研究所が、環境省水・大気環境局の協力の下、関連する過去の審議会等の答申、報告、配付資料や通知等を収集し、一元的に取りまとめたものとなっている。
 資料集のサイトでは、環境基準の位置づけと性格に始まり、環境基準の目的や決め方、基準設定に至らない場合の扱いについても簡素に説明されている。資料集自体は、大気、水質、土壌、騒音に区分され、総説、各々の対象ごとの基準値や指針値、その設定根拠等が取りまとめられている。
 エコケミストリー研究会でも、PRTR排出量解析において毒性値を取り扱っているが、基準設定の根拠を確認するために古い資料を探すことや購入することもあった。このように経緯や根拠が取りまとめられたことは、今後の管理のためにも非常に有意義だと考えられ、この資料が環境規制や環境リスクの評価・管理の考え方の理解の促進につながることが望まれる。(文責:浦野 真弥)


2022年3月号(No.172)

環境省が「4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします」を公表
 環境省と厚生労働省は、新年度から表記の報告制度が開始されることを3月1日に公表した。
 2022年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等および労働基準監督署に報告することが義務づけられる。
 この報告は、原則として電子システム「石綿事前調査結果報告システム」から行うこととされており、パソコン、タブレット、スマートフォンから、行政機関の開庁日や開庁時間にかかわらず、24時間オンラインで行うことができ、1回の操作で都道府県等と労働基準監督署の両方に報告することができる仕様となっている。また、複数の現場の報告も、まとめて行うことができる。
 事前調査結果の報告対象は年間200万件程度と見込まれており、(1)建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80m2以上)、(2)建築物の改修工事(請負代金の合計額が税込100万円以上)、(3)工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額が税込100万円以上)のいずれかに該当する工事(2022年4月1日以降に工事に着手するもの)で、個人宅のリフォームや解体工事なども含まれる。ただし、上記以外の工事であっても建築物等の解体・改修時には事前調査の実施、調査結果の保存等が必要とされている。また、事前調査は必要な知識を有する資格者(一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者)に依頼する必要がある。
 排出は当分続くと見込まれることから、適切な管理の継続が望まれる。(文責:浦野 真弥)

「光化学オキシダント健康影響評価検討会(第1回)」が開催
 環境省は、3月3日に表記の第1回検討会を開催した。
 光化学オキシダントについて、1973年の環境基準の設定以降に多くの科学的知見が蓄積している。また、植物による二酸化炭素吸収を阻害することから、気候変動という観点からもその影響が懸念されている。このような背景を受け、2022年1月の中央環境審議会大気・騒音振動部会において、「気候変動対策・大気環境改善のための光化学オキシダント総合対策について<光化学オキシダント対策ワーキングプラン>」を提示し、光化学オキシダントの健康影響に係る環境基準の再評価と植物影響を勘案した環境基準の検討を視野に入れ、知見の取りまとめを推進していく方針が示された。
 また、諸外国では光化学オキシダントの主成分であるオゾンについて環境目標値を改定する動きがあり、WHO(世界保健機関)はオゾンの環境目標値に関するガイドラインを昨年改定している。
 環境省は、国内外の光化学オキシダントに関する科学的知見を踏まえ、(1)光化学オキシダントの毒性学研究に関する健康影響、(2)光化学オキシダントの疫学研究に関する健康影響、(3)光化学オキシダントに関する健康影響評価を検討し、令和4年12月頃に取りまとめる予定としている。
 大気中の反応は複雑で、大陸からの影響もあるため対策も難しいが、街中で白煙と強い酸臭の排ガスを排出している車両を見る頻度は一時期よりも上がっているように感じられる。できる対策の確実な実施も重要と考える。(文責:浦野 真弥)


2022年1月号(No.171)

環境省が「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の公布及びプラスチック使用製品廃棄物分別収集の手引きについて」を公表
 環境省は、1月19日に令和3年6月11日に公布された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の規定に基づき、法律に係る表記の施行令等(政令2件、省令・命令5件、告示2件)の公布および分別収集の手引きについて公表した。
 法律では、プラスチックの資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するため、設計・製造、販売・提供、排出・回収・リサイクルの製品ライフサイクル全体において資源循環体制を整備するよう設計されている。
 今回の施行令等では、その具体的な基準や手順等を示しており、政令で法の施行日を令和4年4月1日とし、設計認定等の申請に係る手数料の額、特定プラスチック使用製品及び特定プラスチック使用製品提供事業者の業種、分別収集物の再商品化に必要な行為等の委託の基準等を定めた。
 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則」では、再商品化計画、自主回収・再資源化事業計画及び再資源化事業計画の認定等に係る各種手続などの細則を定めた。そのほか、プラスチック使用製品の設計について主務大臣の認定を受けるために必要な申請手続や特定プラスチック使用製品提供事業者が、合理化により製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置についての判断基準となるべき事項などを定めている。
 プラスチックの利用と循環に関しては、国民の意識と制度や国際的な潮流との間に乖離があるように感じられ、趣旨等の浸透も求められよう。(文責:浦野 真弥)

環境省が「令和2年度漁業者の協力による海底ごみ回収実証業務の結果について」を公表
 環境省は、12月9日に表記の結果を公表した。
 環境省は、水産庁とも連携し、漁業者等がボランティアで回収した海ごみを自治体が処理する場合の費用を補助する制度を2020年度に新設した。初年度は21の道府県が本制度を利用し、持ち帰ったごみの処理が進められている。さらに、この取り組みについて「漁業者の協力による海底ごみ回収実証地域」として、7地域を決定し、令和2年度より実証業務を開始している。
 実証業務では、自治体と漁業者間の協力体制の構築の手順、回収から処分までに発生する課題の解決、より効率的・効果的な回収、海洋ごみの発生源特定などの検討に資するマニュアルの策定を3か年程度で進めていく予定であり、令和2年度は自治体・漁業者へのヒアリング・アンケート調査、及び海底ごみの調査が行われ、その結果が今回公表された。
 この結果では、海底ごみが多い場所・時期、海ごみ回収の効果や課題などのヒアリング等調査の結果に加えて、実際に回収されたごみ量と質が示されており、全調査地点において、プラスチック類の占める割合が高いが、東京ではゴムが多いなど、地域的な違いがある可能性も示されている。
 海洋ごみは回収が難しいケースが多いため、国や自治体による支援の継続が求められる。あわせて漁業関係者等から提案されている経済合理的な仕組みについても検討が必要であろう。(文責:浦野 真弥)


2021年11月号(No.170)

環境省・経済産業省・厚生労働省が「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定及び意見募集の結果について」を公表
 関係三省は、10月15日に表記の閣議決定および意見募集の結果を公表した。
 今回の改正では、最新の有害性に関する知見等に基づいた対象物質の追加、および最新の有害性情報が物質選定基準に合致しないもの、およびばく露が小さい(排出移動量、推計排出量または製造輸入量が小さく、環境中での検出がなく、かつPRTR届出・推計の実績がない)ものの除外が行われている。
 対象事業者が排出移動量を届け出る必要がある第一種指定化学物質は、現行の462物質から改正後は515物質となる。なお、特定第一種指定化学物質は、現行の15物質から23物質となる。また、SDSの交付が必要となる第二種指定化学物質は、現行100物質から134物質となる。
 これらの新たな指定化学物質の排出量・移動量の把握ならびにSDS提供義務は2023年4月1日からとなっており、排出移動量の届出は2024年4月からとなっている。
 対象事業者においては、大幅な変更となるが、施行に向けて排出量の把握方法などの検討を進めていく必要がある。当会でも準備を進めているが、単なる届出物質の増減に留めず、有用な化学物質情報として活用されることが強く望まれる。(文責:浦野 真弥)

環境省が「水質汚濁に係る環境基準の見直しについて」を公表
 環境省は、10月7日に表記の基準見直しの告示を公表した。
 本告示により、人の健康の保護に関する環境基準のうち、六価クロムについての水質汚濁に係る基準値および地下水の水質汚濁に係る環境基準が0.05mg/Lから0.02mg/Lとなる。これは2018年9月に内閣府食品安全委員会において、六価クロムの一日耐容摂取量(TDI)が1.1μg/kg体重/日と設定されたことを受けて、2020年4月に水道水質基準値が変更されたことによる。
 また、生活環境の保全に関する環境基準のうち、大腸菌群数を、新たな衛生微生物指標として大腸菌数へ見直している。従来の大腸菌群数は、ふん便汚染の指標として設定されていたが、水環境中において大腸菌群が多く検出されていても、大腸菌が検出されない場合があり、汚染を適切に把握できていないことがあった。このような背景と基準設定当時にはなかった大腸菌数の簡便な培養技術が確立したことを受けて、変更となった。なお、大腸菌数の基準値は、現行の河川、湖沼、海域の類型区分とその利用目的の適応性に基づき設定することとされた。また、各々の測定方法は告示に示されている。これらの施行期日は2022年4月1日となっている。
 六価クロムについては、追って水経由の摂取リスクを想定したその他の関連法令の基準値についても変更されていくと考えられるので、注意を要する。(文責:浦野 真弥)


2021年9月号(No.169)

経済産業省がグリーンイノベーション関連プロジェクトの計画を策定・公表
 経済産業省は9月14日に(1)「『製鉄プロセスにおける水素活用』プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画」および(2)「『燃料アンモニアサプライチェーンの構築』プロジェクトの研究開発・社会実装計画」を策定したことを公表した。また、9月15日に同プロジェクトの公募を開始(1)(2)したことを公表した。
 国は2050年カーボンニュートラル目標に向けて、令和2年度第3次補正予算において2兆円の「グリーンイノベーション基金」を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)につくり、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援していくこととしている。
 基金の適正かつ効率的な執行に向けて、産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会において、「分野別資金配分方針」が決定された。これを踏まえて、プロジェクトごとの優先度・金額の適正性等を審議し、各プロジェクトの内容を「研究開発・社会実装計画」として策定し、順次公募を開始することとなっている。
 これらは我が国の産業発展、カーボンニュートラル達成に重要だと考えられるが、不透明な部分も多いことから、基金の趣旨である「野心的かつ具体的な目標」に向けて官民一体となって推進していくことが望まれる。(文責:浦野 真弥)

経済産業省が「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を改訂
 経済産業省は、7月26日に表記のロードマップの改定を公表した。
 カーボンリサイクルとは、CO2を資源として捉え、これを分離・回収し、コンクリート、化学品、燃料など多様な製品として再利用するとともに、大気中へのCO2排出を抑制する技術である。
 「カーボンリサイクル技術ロードマップ」は、当該技術について、目標、技術課題、フェーズ毎の目指すべき方向性を設定し、広く国内外の政府・民間企業・投資家・研究者など関係者に共有することによりイノベーションを加速する目的で、学識経験者・技術者を中心に、内閣府、文部科学省、環境省の協力を得て、2019年6月に策定された。
 2019年のロードマップの策定後、国内外においてカーボンリサイクル技術に係る研究開発・事業化が加速するとともに、米国をはじめとした国々との国際的な連携が進展する等、多岐に亘って大きな進展があったため、今回、進展のあった新たな技術分野(大気中からCO2を直接回収する技術と合成燃料)を追記し、カーボンリサイクル製品(汎用品)の普及開始時期を2040年頃に前倒しするなどの改定を行っている。
 カーボンニュートラルに向けて急速な社会転換が生じている。上記のカーボンリサイクル、左記の脱炭素技術の開発や、エネルギー構成の転換と安定供給など各技術やシステムの社会実装に向けて、着実に前進させることが求められる。(文責:浦野 真弥)


2021年7月号(No.168)

国土交通省が「2023年から世界の大型既存外航船にCO2排出規制開始」を公表
 国土交通省は6月18日に「2023年から世界の大型既存外航船にCO2排出規制開始〜国際海事機関(IMO)第76回海洋環境保護委員会(6/10〜17)の審議結果〜」を公表した。
 国際海事機関(IMO)は、6月10日〜17日にかけて、第76回海洋環境保護委員会をWeb形式で開催し、世界の大型外航船への新たなCO2排出規制「既存船燃費規制(EEXI)・燃費実績(CII)格付け制度」に関する条約を採択し、当該規制を2023年から開始することを決定した。これにより、従来は新造船のみが対象であったCO2排出規制が既存船に対しても適用され、国際海運からのCO2排出量の大幅削減が期待されることになった。
 そのほか、同委員会では、日本主導で共同提案した海運脱炭素化のための研究開発・実証を支援する5000億円規模の国際ファンド創設案が審議されたが、条約承認の是非について、次回審議へ持ち越された。また、北極海における重質燃料油の使用・保持の禁止やシブトリンを含有する防汚塗料の禁止等について関連する国際条約を採択した。
 すでに我が国でもIMOでの国際合意に基づく2050年の国際海運からのGHG排出の削減目標50%、および今世紀中のゼロエミッションを目指すための「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」が2020年3月に策定され、2028年に向けてゼロエミッション船の開発などが進められている。
 陸上輸送において急激な脱炭素シフトが起こっているが、海運に関しても大きな変化が訪れていると考えられ、日本での技術開発や先進的取り組みの推進が期待される。(文責:浦野 真弥)

環境省が「再生可能エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドラインの改訂について」を公表
 環境省は、7月1日に表記のガイドラインの改定について公表した(。
 再生可能エネルギーの導入による温室効果ガス排出削減効果の評価に当たっては、二酸化炭素を排出しない使用時のみだけではなく、ライフサイクル全体を考慮した削減量を評価する、いわゆるライフサイクルアセスメント(LCA)にも着目することが必要となる。
 環境省は、2013年3月に「再生可能エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」を策定し、事業者が自らライフサイクルを考えた温室効果ガスの削減効果の算定を行うためのガイドラインを公表している。
 今回は、前回のガイドライン策定から8年が経過し、その間に利用が拡大した輸入バイオマスを活用する事業者がLCAの観点から自らの事業を評価することができるよう、ガイドラインの該当箇所の内容を拡充させる等の改訂を行ったものとなっている。
 昨今の国際会議での議論、海外の法律制定、国内関連法案の改定など、脱炭素に関わる変化のスピードが上がっているように感じられる。再生可能エネルギーに関しては、普及率の増加に伴って、利用調整など、種々の技術やシステムとの併用も多くなると考えられる。状況に応じた適切な評価が可能となるよう継続的な国のイニシアチブが求められる。(文責:浦野 真弥)


2021年5月号(No.167)

国土交通省が「気候サミット特別セッション(海運・海洋部門)の結果報告」を公表
 国土交通省は4月21日に米国が主催した首脳会合「気候変動サミット」に併せて開催された海運・海洋分野に関する特別セッションの結果を公表した。
 会合には日米等10カ国の閣僚等が出席し、船舶のゼロエミッション実現に向け、国際海事機関(IMO)を通じてグローバルで野心的な気候変動対策の強化に取り組むことを確認した。
 日本からは、海運・造船大国として、ゼロエミッション船を2028年までに実現し、国際海運の脱炭素化をリードするとともに、各国と連携し、IMOにおいて野心的かつ効果的な国際ルールの策定に取り組む旨を表明した。
 我が国では、国際海事機関(IMO)での国際合意に基づく2050年の国際海運からのGHG排出の削減目標50%、および今世紀中のゼロエミッションを目指すための「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」が2020年3月に策定された。このロードマップでは燃料利用効率の向上、運航効率化、次世代燃料利用が示されているが、ゼロエミッション船には、次世代燃料利用を筆頭に船舶設計や再生可能エネルギー利用、廃熱利用などの省エネ技術導入や、電力利用、船上削減技術などあらゆる効率化技術の導入検討が必要と考えられる。今回の2028年までのゼロエミッション船の実現宣言は、ロードマップスケジュールを大幅に加速させるものと考えられ、国の強い支援が求められる。(文責:浦野 真弥)

海洋研究開発機構が房総半島沖水深6,000m付近の海底から大量のプラスチックごみを発見したことを公表
 (国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、3月30日に表記の調査結果を公表した。
 陸域から海洋に流出するプラスチックの量は、年間1,000万トン以上と推定され、累積では数億トンに及んでいる可能性がある。一方、海洋の実態調査に基づく全地球的な海洋プラスチックの現時点の存在量は44万トン程度と見積もられ、両者の間には非常に大きな開きがあった。生物の付着によって重くなったプラスチックが沈降することは認知されていたが、深海調査は容易ではなく、実態はあまり把握されていなかった。
 今回のJAMSTECの調査は、房総半島から500kmほどの沖合にある「黒潮続流・再循環域」の直下の深海平原(水深6,000m付近)で実施され、ほとんど調査されていなかった大深度の海底にもプラスチック汚染が広がっていることを明らかにした。この見つかったごみの大部分(8割以上)はポリ袋や食品包装などの「使い捨てプラスチック」で、35年以上前の食品包装がほとんど無傷で見つかるなど、水温の低い深海ではプラスチックがほとんど劣化しないこともわかった。
 海底のプラスチック存在量は海流や地形の影響を受けるため、正確に把握することは困難であろうが、様々な研究により、相当量が沈降していることが分かってきた。私たちは、プラスチックの製造と使用の責任を改めて考える必要があろう。(文責:浦野 真弥)


2021年3月号(No.166)

環境省が「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」を公表
 環境省は3月2日に表記の法律案が閣議決定されたことを公表した。
 2020年10月「2050年カーボンニュートラル」の宣言を受けて、地域では、2050年の「ゼロカーボンシティ」を表明する自治体が増加し、企業では、ESG金融の進展に伴い、気候変動に関する情報開示や目標設定など「脱炭素経営」に取り組む企業が増加し、地域の企業にも波及している。
 こうした状況を受けて、(1)パリ協定・2050年カーボンニュートラル宣言等を踏まえた基本理念の新設、(2)地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業を推進するための計画・認定制度の創設、(3)脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進等について改正する法律となっている。
 上記(2)について、市町村は施策実施に関する目標を実行計画に追加するとともに、地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業に係る促進区域や環境配慮、地域貢献に関する方針等を定める努力をすることとされている。さらに、市町村から、計画に適合していること等の認定を受けた地域脱炭素化促進事業計画に記載された事業については、関係法令の手続のワンストップ化等の特例を受けられることとししている。
 地域に応じた事業を、スピード感をもって推進することが求められる情勢だが、拙速な事業推進による周辺影響も防ぐ必要があり、両者のバランスが求められる。(文責:浦野 真弥)
環境省が「生態毒性予測システム『KATE 2020 version 2.0』への更新について」を公表
 環境省と国立研究開発法人国立環境研究所は、1月28日に「生態毒性予測システム(通称:KATE)のインターネット版「KATE2020 version 2.0」を公開した。
 KATEは生態毒性QSAR(定量的構造活性相関)モデルの一つで、化学物質の構造式等を入力することにより、魚類急性毒性試験の半数致死濃度、ミジンコ遊泳阻害試験の半数影響濃度等を予測するシステムとして利用されてきた。
 今回、公開された「KATE2020 version 2.0」は、2011年に公開した「KATE on NET」の機能を大幅に充実させて2019年1月から公開している「KATE2017 on NET」(2020年1月に「KATE2020 version1.0」へ更新)の更新版である。
 「KATE2020 version 2.0」の主な機能は、(1)化学物質の構造にもとづく生態毒性値の予測、(2)予測結果が適用範囲内であるかの判定、(3)QSARモデルのグラフ表示、(4)複数の化学物質に対する毒性値の予測であり、また、改良点は、(1)QSARモデルの更新、(2)表示・操作方法の改良(入力された化学物質の部分構造に対する構造判定結果を表示する機能の追加等)、(3)構造クラス名の改良となっている。
 現在は、法律で定められた毒性試験の代替にはならないが、スクリーニング目的では活用することができる。多種多様な化学物質による影響を最小化するために、このようなツールが有効活用されることが望まれる。(文責:浦野 真弥)


2021年1月号(No.165)

環境省が気候変動影響評価報告書を公表
 環境省は、2020年12月17日に気候変動適応法に基づくものとしては初めて表記の報告書を公表した()。
 本報告書では、最新の科学的知見に基づき、全7分野71項目を対象として、影響の程度、可能性等(重大性)、影響の発現時期や適応の着手・重要な意思決定が必要な時期(緊急性)、情報の確からしさ(確信度)の3つの観点から評価を行っている。 なお、この報告書は令和3年度に予定している気候変動適応計画の変更や、地方公共団体及び事業者による気候変動影響の把握や適応策の検討等に活用されることが想定されている。
 重大性、緊急性、確信度のいずれも高いと評価された項目のうちで今回確信度が向上した項目として、「利用可能な水量の減少」、「斜面災害の多発による農地への影響等」、「海面水位の上昇による河川河口部における海水(塩水)の遡上による取水への支障等」、「気候変動による短時間強雨や渇水の増加」、「強い台風の増加等に伴うインフラ・ライフライン等への影響」等があげられており、新たに「特に重大な影響が認められる」と評価された項目として、「台風や竜巻、大雪による建物への影響」、「暑熱による高齢者への健康影響」等があげられている。新たに「対策の緊急性が高い」と評価された項目としては、「家畜の生産能力、繁殖機能の低下等の影響」、「台風の最大強度の空間位置等の変化、竜巻被害等の影響」等があげられている。そのほかに複合的な災害影響、分野間で連鎖する影響もあげられており、適応と緩和の両輪での対策推進の重要性が説かれている。
 不確定な要素も多分に含まれる予想であるが、それゆえに科学的な知見の集積・更新と適応等検討の継続が求められる。(文責:浦野 真弥)

欧州化学物質庁がSCIPデータベースに五百万件以上の登録があったことを公表
 欧州化学品庁(ECHA)は、2021年1月8日から登録が開始されたSCIPデータベースに5百万件以上の登録申請があったことを1月11日に公表した。このSCIPデータベースは、欧州廃棄物枠組み指令(WFD)に基づくもので、REACH規則の高懸念物質(SVHCs)を0.1wt%以上含む製品を上市する企業が化学物質名や濃度範囲、製品中で当該物質が含まれる場所、安全に使用するための情報、廃棄物になった際の適切な管理方法などの安全な取扱情報を登録しなければならない。ECHAは、今後、数か月の間にデータを整理して公開する予定であり、機能の充実を図っていく予定であるとしている。
 高懸念化学物質の透明性が高まることによって、消費者がより多くの情報に基づく商品を選択することが可能となり、リサイクル関連事業者が再資源化過程を改善できることが期待されている。
 ECHAの責任者は、「先進的な企業はすでに情報を送付してきており、より安全なサーキュラーエコノミーに貢献している。先進企業を参考にして、全ての企業が製品中の有害化学物質に関する知見を増すための役割を果たすことを促す。」としている。
 収集した膨大な製品中有害化学物質の含有情報の利用方法については、まだ不透明な部分があるが、今後の我が国の資源循環施策にも活用できる部分があると考えられる。(文責:浦野 真弥)


上記の情報をご利用になる場合は、各情報元をご確認下さい。

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